門仲天井ホールに寄せて

皆さま、こんにちは。ピアニストの井上郷子(いのうえさとこ)です。現在、「門仲天井ホールの今後を考える会」の一員として、普段はお会いする機会がなかなかない、素晴らしい方々にお会いすることができています。門仲天井ホールには、こういった、優れた魅力ある人々をひきつける力があると信じます。
私は音楽家ですので、以下、音楽のことを書きます。
先日、三輪眞弘さんの作品による演奏会を、サントリーホールに聴きに行きました。いつものように、会場入口でいろいろな演奏会のチラシが入ったビニール袋を手渡されました。1枚1枚丁寧に見ていきますと、新作の初演や日本初演、20世紀以降の音楽の演奏会は結構、多い印象を受けます。一時期、これらの音楽の上演が枯渇したように見えた時期がありましたが、オーケストラ、オペラ、作曲家の同人の演奏会・・等々、今は“芸術の秋”ですしね、素晴らしいことです。確かに、東京には(というか、日本には)規模の大きな、音響にも優れたホールはいくつもあります。演奏会企画の面でも、大きいホール、或いは規模の大きい財団ならではの、内容の立派な素晴らしい演奏会~大概は評価の定まった作品や音楽家による演奏会であることは当然のことですが~や音楽祭が行なわれており、確かにそれらは私たちの時代の芸術文化を担っていると言うことができます。それとともに、門仲天井ホールのように、小回りがきき、ある意味で何でも試すことができ、継続することができる場所や機会も、真にクリエイティヴな音楽家や若い音楽家たちにとって、必要不可欠な存在であると私は思います。実のところ、現代の、そして未来の芸術文化の行く末は、そういった若い世代の音楽家が、彼らの持つ力を十分に発揮できるかどうか、にかかっていると思うからです。 
私自身は、門仲天井ホールでは、ホール企画として2008年より年3回、“music documents”という演奏会シリーズを、作曲家の伊藤祐二さんとともに企画をし、演奏をしています。このシリーズは、タイトルのとおり、評価が定まったものばかりでなく、現在進行形の新しい音楽の取り組みを「ドキュメント」するものです。ある批評家が「小さな輸入CDショップが音楽シーンに影響を与えることがあるように、今やこのシリーズは小規模ながらも東京の音楽界に大きな貢献を果たしつつある・・・」と書いてくださいましたが、音楽家とホール双方の継続の意志と共感とが、それを可能にしているのだと思います。門仲天井ホールは、底力を秘めた、稀有なホールに違いありません。
井上郷子 :ピアニスト/国立音楽大学准教授